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追求
2002/05/10(Fri) 00:00:00
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<<登場人物>>
緒方正人 :とら吉より北島舞の失踪調査依頼を受け調査中、北島俊介の殺害現場の遭遇、北島舞の失踪依頼に疑問を抱きロシアンマフィアとの関係を考える。
北島舞 :謎の失踪中、緒方正人の調査対象者。
北島俊介 :北島舞の兄、サザンクロスのホスト、何者かに殺害される。
村雨隆二 :緒方正人が刑事時代の後輩、現防犯課刑事。
虎影淳吉(とら吉):緒方正人と友人、北島舞の失踪調査依頼を持ってきた。
メイ :元ロシアンダンサー、4年前に緒方正人にロシア窃盗団のアジトを教る、緒方正人は、窃盗団から彼女を守るため「るるママ」で働かせる。
富田(ゴロッチ) :北進会の構成員、スノーキャッスルのオーナー
片桐 :北進会の構成幹部、皇と組みロシアンマフィアを追い出す画策を行う。
皇 :中国マフィア幹部、ロシアマフィアを追い出し地盤を作ろうとしている。
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***** 本編 *****
片桐のジャガーは、閑散とした海水浴場の駐車場に止まった。
「ジャガーの横につけろ」ゴロッチは厳しい表情になっていた。
ここで、消されることはないだろう。
しかし、がけっぷちを歩いている、片桐は状況によっては別れた後、
俺に獲物を呑んだ、鉄砲玉を飛ばすに違いない。
俺だけではない、こいつにも飛んでくるだろうと思いながら運転手の男を見た。
ゴロッチのベンツがジャガーの横に止まり、運転手の男が降りゴロッチの座っている後部席の
扉を開ける。
ゴロッチはジャガーから目を外さずに降りた。
ジャガーからは、誰一人降りてこない。
「車に戻ってろ」目線をを動かさずにゴロッチは運転手の男にいった。
運転手の男が、車に戻り扉を閉めたときジャガーの助手席の扉が開いた。
片桐のボディーガードが降り立った。
ボディーガードは、後部席の扉を開け、片桐が降りてくるのを待った。
静かに降りてきた片桐は、無表情な顔でゴロッチを見た。
ボディーガードは、後部席の扉を閉めると、数歩ゴロッチに近づき
「てめぇ」と言って、鼻白んだ。
「静かにしてろ」片桐は、ボディーガードに向かって諭すように言った。
「何故、尾行(つけ)てきた」抑揚のない声で、ゴロッチに目線を向けた。
「りく、お前は何をしようとしているんだ」ゴロッチは表情を一段と厳しくした。
「てめぇ、誰に向かって言ってんだ」ボディーガードは、今にもゴロッチに飛び掛る勢いで叫んだ。
ゴロッチは、ボディーガードを無視し、片桐を見つめている。
「静かにしろと言ってるだろ」片桐は、ボディーガードを怒鳴りつけた。
「浜を歩いて、みないか」ゴロッチは表情とは違う、静かな声で片桐に言った。
「ここで、待ってろ」ボディーガードに伝え、片桐は歩き出した。
ゴロッチは片桐に並び、歩き出した。
無言のまま、二人は砂浜についき、荒れ狂う日本海の波頭を見つめてた。
「あの頃が懐かしいな」誰に言うでもなく、ゴロッチは呟いた。
「チンピラだった頃か」片桐も呟くように言った。
「何故、此処にきたんだ」今度は、はっきり片桐に問い掛けた。
「ここが、俺の原点だからだろうな」真直ぐ日本海を見つめ答えた。
「始まりと終わりを同じ場所にするということか」ゴロッチは片桐を見た。
「あの頃俺はあんたに憧れてましたよ」と言った片桐は、微笑んだように見えた。
「ゴロッチさん、北進会が生まれ変わるための始まりなんですよ」
「北進会をどう変えると言うんだ」
「出世を途中下車した、あんたには関係のないことですよ」
「俺が昇るより、お前が昇るほうが北進会のためと思っているだけだ」
「それなら、黙って見ていてくださいよ」
「今のお前は、焦っているだけにしか見えない」
「冷静ですよ、私はどんな時もね」片桐は微笑んだ。
「今日合った奴とつるむのは、冷静に考えた結果ってことか」ゴロッチは厳しい声になった。
片桐がここで、何もかもをぶちまけたら、
別れた後、刺客が飛んでくることをゴロッチは覚悟した。
「傍観者だったあんたに誰と合ったか、何をしているかを語る必要もないね」
片桐は、日本海の荒れ狂った海を背にして、歩き出した。
「俺は、北進会をまもる」片桐の背中に向かって言った。
「俺も守りますよ、もっと大きくしてね」楽しげに言って、片桐は去った。
決意
2002/05/01(Wed) 00:00:00
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<<登場人物>>
緒方正人 :とら吉より北島舞の失踪調査依頼を受け調査中、北島俊介の殺害現場の遭遇。
北島舞の失踪依頼に疑問を抱きロシアンマフィアとの関係を考える。
北島舞 :謎の失踪中、緒方正人の調査対象者。
北島俊介 :北島舞の兄、サザンクロスのホスト、何者かに殺害される。
村雨隆二 :緒方正人が刑事時代の後輩、現防犯課刑事。
虎影淳吉(とら吉):緒方正人と友人、北島舞の失踪調査依頼を持ってきた。
メイ :元ロシアンダンサー、4年前に緒方正人にロシア窃盗団のアジトを教る、
緒方正人は、窃盗団から彼女を守るため「るるママ」で働かせる。
富田(ゴロッチ) :北進会の構成員、スノーキャッスルのオーナー
片桐 :北進会の構成幹部、皇と組ロシアンマフィアを追い出す画策を行う。
皇 :中国マフィア幹部、ロシアマフィアを追い出し地盤を作ろうとしている。
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***** 本編 *****
ゴロッチは片桐の入って行った、倉庫の扉を見つめていた。
倉庫の扉が開かれ片桐があらわれた。
片桐は、急ぐ様子もなくジャガーに乗り込み動きだす。
「追え」静かにゴロッチは言った。
ジャガーはO港町の倉庫街を抜け高速へと戻って行く。
ゴロッチは考えていた。
此処で、片桐を止め問い詰めるべきかを。
この機会を逃すと、二度と機会はこないだろう。
例え二人になって、問い詰めたとしても惚けられればそれで終わりだ。
しかし、今片桐に対して問い詰めることは、自分の身の破滅の危険をはらんでいる。
考えているうちに車は、高速をS市歓楽街に向け走っていた。
ゴロッチは意を決し、静かに言った。
「ジャガーの直ぐ後ろにつけろ!!」
「そんなことをしたら、片桐さんに尾行(つけ)ていたことがばれます。」
慌てた様子で言いながら、運転手の男はルームミラー越しにゴロッチの顔を見た。
「かまわん」
静かな口調とは、裏腹にゴロッチの顔は今までに見た事のない厳しい表情になっていた。
「わかりました。」
運転手の男は、ルームミラー越しにゴロッチの顔を見ながらアクセルを踏み込んだ。
ジャガーの後ろにゴロッチのベンツがぴったりとついた。
「しばらくそのまま走れ」
「わかりました。」
片桐に尾行(つけ)ていたことを気づかせないといけない。
国道に入れば、O港町まで尾行(つけ)ていたことを実証できないからだ。
考えているうちにゴロッチの目にS市のあかりが入って来た。
「合図をして、ジャガーの前にでろ」
運転手の男は、無言でジャガーに向けパッシングを2回行い、アクセルを踏んだ。
ベンツはジャガーの前に出た。
ゴロッチは、片桐に尾行(つけ)ていたことが伝わったと確信した。
「ジャガーの後ろにつけろ」静かに言った後、後部席に深く身を沈めた。
ジャガーは高速のインターチェンジ抜け、
国道を事務所のあるS市歓楽街と逆の方向に向かった。
ゴロッチは、片桐が何処に向かっているのか察しがついた。
夏は、海水浴場になる海岸の砂浜に向かっているのだ。
二人がまだチンピラだったころ、夏の商売(しのぎ)をするためにテキヤをやっていたところだ。
ゴロッチは、ベンツの窓を開けた。
体が凍りそうな風が車内に入ってきた。
それと、同時に潮の香りと懐かしさがゴロッチに蘇った。
皇
2002/04/25(Thu) 00:00:00
(前回までのあらすじ)
<とら吉と逢い、サザンクロスとロシア組織の関係、北島舞の兄北島俊介の殺害、
北島舞の失踪調査依頼など彼の不自然な言動で、緒方の疑問を深めた。
一方、ゴロッチは昔弟分だった片桐に命じられ緒方正人についての報告に訪れた。>
***** 本編 *****
ゴロッチは事務所を出て、駐車場にあるベンツの後部席に乗り込んだ。
運転席にいるのは、まだ準構成員の若い男である。
1年前まで、アマチュアのレースに出ていたほどの腕前だ。
「富田さん、店の方でよろしいでしょうか」
返事もせず、ゴロッチは考えていた。
片桐が緒方のやさを何故調べさせ、緒方が俺の店に薬のことを聞きに来た。
片桐が薬の売をやっていて、それを緒方が追っているのか?
緒方がまだ刑事なら薬を追っていても不思議ではないが奴は刑事を辞めている。
「富田さん、どちらに廻しましょう」運転手の男は恐る恐る言った。
「あぁ、店にやってくれ」
「はい」と言って車を出した。
富田を乗せたベンツが片桐の事務所の前を通り過ぎようとした時、片桐のジャガーが事務所に横付けされていた。
「止めろ」咄嗟にゴロッチが言った。
何故、車を止めさせたのかゴロッチも良く解らなかった。
片桐の動きが気になっているのは、確かだ。
「どうされました。」車を止め怪訝そうに運転手の男が言う。
「事務所の前に止まっているジャガーをつけろ、見つかるなよ」厳しく言い放った。
「はい」と言い、緊張した様子でベンツを出した。
ジャガーの200mほど後ろに止め、ベンツのライトを消し待った。
程なくして、事務所の電気に照らし出された片桐が見て取れた。
片桐を乗せたジャガーは、国道を走り高速に乗った。
片桐は、事務所を出る前に皇に電話を入れていた。
ジャガーは高速を降り、O港町の倉庫街に入った。
この辺りは、運河の周りに倉庫街があり観光地としても有名な港町である。
運河の外れのレンガ作りの倉庫の前にジャガーが止まった。
倉庫の前には、2人の男が立っている。
ひとりは長身で体格が良く、鋭い目を片桐に向けた。
もうひとりは、さして特徴もないが何を考えているのか掴みどころのない目をしていた。
長身の男が片桐に向かって言った。
「カタギリサンデスネ」訛った日本語が飛んできた。
「そうだ、皇さんは中だな」
「ハイ、」と言って倉庫の扉を押した。
特徴のない男がすかさず片桐のボディーチェックを行った。
「突然、ビックリしましたよ片桐さん」奥のほうから声がした。
「電話のことですか」と言いながら片桐は皇に近づいた。
その時、扉の閉まる音がした。
倉庫には、小さなテーブルと数脚のバイプ椅子が転がっている。
パイプ椅子を手にとり片桐は皇と向かい合うように座った。
皇とボディーガードらしい男が立っていた。
その傍らに、縛られ猿轡をされた女がひとり転がっている。
皇は日系二世の中国人で、マフィアの幹部として日本に来ていた。
「何か、有りましたか」
「ロシアの件どの程度進んだのか、気になりだしましてね」
「今、進めているとこです。焦らないで下さい。」
「早くしないと上も気づく、ゆっくりもしてられないんだ」
「確かにロシアと繋がっている北進会さんの上層部が気づくと大変ですね。
ただ焦っても良い結果は生まれませよ」諭すように片桐に言った。
「この、女を早くロシアの棟梁に突きつければいい」片桐は女を見つめながら言った。
「そんなに簡単には行きませんよ、ロシアの棟梁も今日本にはいないのですから」
「女を連れて、ロシアに飛べば済むことじゃないのか」片桐は語調を強くした。
「私たちに敵陣へ乗り込んで、死ねとおっしゃってるんですか」
険悪なムードが漂った。
「片桐さん何か他に気になることが起きているのではないですか」皇は片桐の動揺を見透かしたように言い放った。
少し考え片桐は言った。
「昔、凄腕だった刑事(デカ)がこの女を探している」
「元刑事さんですか、なんのためにです。」
「それは、わからない。」と言って片桐は天井を仰いだ。
「その方は、大変怖いようですね。私も動くことにしましょう。」皇は不気味な笑みを浮かべ片桐を見つめる。
「どうするつもりだ」片桐は背筋に冷たいものを感じた。
「居て邪魔なら、居なくすればいい、それだけ」
片桐は改めて中国マフィアの恐ろしさを感じた。
「片桐さん、私からひとつ聞いて良いですか」
「なんでしょう」
「この女、本当にロシアンマフィアの棟梁の娘ですか」
「何を疑ってるんです。」
「確かに容姿は、そっくりなんですがロシアの言葉を知らない」
片桐にとっては、ロシアの棟梁が娘可愛さに日本から手を引いてくれれば、偽者でも本物でもどちらでも良いことだった。
ロシアを追い出し中国が仕切れば、そのパイプを持っている片桐がもう一段階段を上れるのは確かである。
ただ、此処で皇に不信感を与えては得策とはいえない。
「解りました、女のことは私が調べましょう。もともとうちが連れてきた女ですから。」
と言って、片桐は立ち上がった。
それにつられるように、皇も立ち上がった。
「それじゃ、また」と言って片桐は手を差し出した。
「再見」と言って皇は片桐の手を握った。
ゴロッチは、片桐が倉庫から出てくるにのを待っていた。
今は自分の上ではあるが、昔は可愛い弟分だったのだ。
何か有った時には守ってやりたい、そのためには何をしようとしているのか知っておく必要が有った。
報告
2002/04/20(Sat) 00:00:00
(前回までのあらすじ)
<とら吉と逢い、サザンクロスとロシア組織の関係、北島舞の兄北島俊介の殺害、
北島舞の失踪調査依頼など彼の不自然な言動で、緒方の疑問を深めた。>
***** 本編 *****
片桐は事務所の窓から外を眺めていた。
この、小さな町で自分がなぜを燻っているのか、
窓からS市歓楽街のネオンを見下ろしていると考えてしまう。
「片桐さん、富田さんをお連れしました。」と慇懃(いんぎん)に男が礼儀正しく言った。
「連れて来てくれえ」
男は、一礼をして部屋を出て行った。
「失礼します。」と言って富田が入てきた。
片桐が富田に振り返った。
「俺とゴロッチさんの仲じゃないすか、そんな挨拶は抜きにしよう。」親しみを込めて、片桐は言った。
片桐の目は、言葉とは違っていた。
「ゴロッチさんは辞めてくれないか。確かに昔は、俺の弟分だったが、今ではお前の方が上だ!!」
「弟分は弟分ですよ。」
「用件だけ話す。」突き放すようにゴロッチは、言った。
「いいですよ」
「緒方の件だがな」
「その話ですか」片桐は抑揚のない声で答えた。
元刑事(デカ)の緒方が北島俊介のマンションに入るところを見た時、胸騒ぎがした。
片桐は、ゴロッチに命じ緒方に探りを入れたのだった。
「緒方のやさには、妹の調査依頼書が有ったらしい」と言って、片桐の様子を伺った。
しかし、片桐は黙ったまま何も答えなかった。
「緒方が俺の店に来たよ」ゴロッチは片桐の顔を見つめたままそう告げた。
「何を聞きに....」と言葉を切り、目に驚きが走る。
「北島俊介とサザンクロスのことを聞きに来たんだ」
ゴロッチは薬の売について聞かれたことは伏せた。
「なぜ」とだけ言って片桐は黙った。
二人の間に沈黙が続いた。
「これで、失礼する。」ゴロッチは一礼をした。
「あぁ」と言って、片桐はゴロッチに背を向け、窓の外を見つめた。
ゴロッチは片桐の背中をいっとき見つめ、部屋を出て行った。
片桐は、犬の牙ではなく、獣の牙を持つ刑事(デカ)と噂されていたころの緒方を思い出していた。
静かに近ずき急所を的確に捉える、ロシア窃盗団の事件も裏の世界では伝説的な話である。
片桐が突然振り返った。
「車を表に廻せ」と叫んだ。
秘密
2002/04/17(Wed) 00:00:00
(前回までのあらすじ)
<北島舞の失踪と北島俊介殺害に疑問を抱きながら、とら吉との待ち合わせの「るるママ」に向かう、
「るるママ」でひと時の安らぎ感じつつ会話をしているところに、とら吉が現れた。>
***** 本編 *****
「るるママ」でひと時の安らぎ感じつつ会話をしているところに、とら吉が現れた。>
「イラッシャ・トラキチ」
何も答えずとら吉は、俺の隣に座った。
「トラキチ・ナニスル」
「チリビールをくれないかな」
メイは、にこやかに頷いてキャッシャ横の棚に向かった。
「話はなんだ!!」バックバーに視線を投げながら、俺に行った。
「お前が誘ったんだ」と言ってクロウを口にした。
「俺の話は後でいい、聞きたいことがあると言ってただろう」涼しげな顔で振り向いた。
「お前が依頼した、北島舞のことだよ」
「何を知りたい」
「すべてだ」
何も知らずに調査をすると、踏まなくていい地雷を踏むことになる。
足が吹っ飛ぶくらいならまだ許せる、命の保証自体も危いだろう。
「正人らしくないんじゃないのか」悪がき時代の笑みを口に浮かべた。
メイがチリビールとグラスを手に、とら吉の前に立った。
「ハイ・トラキチ」
とら吉は酌を断る素振りを見せた。
「今日は、緒方と話があるんだここはいいよ」優しい笑顔を見せいった。
メイが離れるのを待つと、とら吉が口を開いた。
「俺が何か知っているとでも、思っているのか」
「何も知らない訳は、ないだろう」
「依頼人のことは、お前にも言えないよ」とうつむいた。
とら吉が何故、頑なに情報を隠蔽しようとしているのか考えていた。
とら吉の親父は建築業界の理事をやっていた、あくまでも表の顔ではあるが。
裏の世界でもかなりの顔であることは、とら吉から聞いたことがある。
その親父の跡を継ぎ軽はずみな行動がとれなくなっているのだろう。
あきらかに、とら吉は危険を感じ取っている。
それが、誰に対してかはわからないが、俺に対しても慎重になっているのである。
「メイを俺に預けないか」
とら吉がつぶやくように言った。
「この調査と、何か関係があるのか」
北島俊介の勤めていた、サザンクロスとの関係を考えた。
「いや」っと言ってチリビールを半分ほど喉に流し込んだ
「何故、そんなことを言う」
「お前が警察を辞め、俺の危険な仕事を繰り返しているのはメイがいるからだろ」
「それが、どうした」クロウをロックグラスに注ぐ
「お前は、裏の世界に身を置くことでロシア組織の動きに対してアンテナをはり、自分の事は考えちゃいない」
確かにとら吉の言う通りだった。
俺には、メイを守る義務があった。
「そんなことか」とつぶやいた。
今になって、メイのことを切り出したことを緒方は不自然に感じた。
とら吉は心配そうな目でバックバーを見つめる。
緒方は、サザンクロスとロシア組織の関係を考えていた。
「るるママ」
2002/04/11(Thu) 00:00:00
(前回までのあらすじ)
<北島舞の失踪調査依頼についての疑問をもつ緒方正人は殺害された北島俊介の調査を始める。
刑事時代に関係のあったゴロマキのゴロッチと呼ばれていた富田に合うためスノーキャッスルを訪れ、
サザンクロスのバックの手がかりを掴む>
*****本編*****
俺は、村雨に連絡を取りたかった。
警察の掴んでいる情報を聞きたかったからだ。
だが、村雨は第1発見者として機捜の事情聴集を受けているにちがいない。
警察では捜査本部がたてられているころだろう。
村雨には、明日にでも連絡をすることにし、俺は「るるママ」に向かうことにした。
歓楽街から少し離れたビルの地下に「るるママ」はある。
そこまでの道のり俺は考え事をしながら歩いた。
北島俊介が殺されたのは、なぜなのか?
売人が警察に目をつけられただけで、殺されることはない。
サザンクロスに日本の組織が入っていないということは、「けつもち」は外国の組織なのか?
外国組織で浮かぶのは、ロシアなのだがロシア組織は高級車などを盗み本国に送るのが資金源になっている。
ロシアではない外国の組織が入ってきているのか、ロシア組織が薬を扱うようになったのか?
その辺りの情報が正確に緒方には掴みきれていない。
北島俊介は売人として殺されたのではなく、組織的な何かの理由で殺されたのではないか。
それに、伴ったいきさつで北島舞も姿をくらましたのではないか。
北島舞の捜査依頼を持ってきた、とら吉は何かを知っているような気がしてならない。
「るるママ」の扉を押し、店に入った。
「イラッシャイ・オガタ」なまりのある声がいった。
カウンターと3つのボックスで20人も入れば満席になるほどの大きさだ。
「オガタ・ココデイイカ」
「ああ」答えながらカウンター奥の椅子に腰かけた。
ママは、にこやかにグラスを磨いていた。
「メイは迷惑かけていませんか?」ママに向かっていった。
「メイさんが来て、ずいぶん助かってるわよ」微笑みを見せた。
「ワタシ・イッショウケン・ガンバッテル」
「そうか、ならいいんだ」宥めるようにメイにいった。
ここなら何かあったとしても、俺の目や耳に届くと考えロシアンダンサーだったメイを俺は辞めさせ、
ママにダンサーのままでは、ロシア組織に繋がってしまうなどの事情を説明し頼んだのだった。
ママは快く引き受けてくれた。
「オガタ・ロックデイイ」言いながらバーボンをロックグラスに注いでいる。
俺は、返事をせずバックバーを眺めた。
店の大きさに比べ、バックバーは一流ホテルに引けを取らないほど素晴らしい。
「またウォッカ増えたんじゃないか」
「メイさんのおかげよ」
ストリチナヤ/ クレプカヤ/デルジャーヴナヤなどが目についた。
「ワタシノクニ・オイシイオサケイッパイアル」
「そうね、ストリチナヤなんておいしいよね」優しくメイに微笑んだ。
「緒方さん如何かしら」優しい微笑みのまま俺を見た。
「今度頂くことにしますよ、烏が怒り出すと困るんで」といいながらオールドクロウのラベルをママに向けた。
ママは、静かに頷いた。
「るるママ」の扉が開き、とら吉がそこに立っていた。
訊き込み
2002/03/30(Sat) 00:00:00
(前回までのあらすじ)
<北島俊介の殺害現場から帰った緒方正人は、北島舞の失踪調査依頼についての疑問をもつ
緒方正人が北島俊介に対しての調査が必要と感じたとき、虎影淳吉の呼び出しを受ける。>
*****本編*****
S市歓楽街に向け、車を走らせながら不信なセダンのことを考えた。
俺は、尾行車がなっかたと確信している。
尾行車があれば、自宅近辺で見つけることが出来たからだ。
近くの家に訪れたのかもしれないが、俺の感がそうは言っていない。
考えているうちに、S市歓楽街のネオンがフロントガラスに現れてきた。
駅前通りを右に入り、立体駐車場に車を止めた。
駅前通りを挟んで東西に飲食店・飲み屋・カジノバー・風俗が軒を並べている。
規模的には、東京などに比べると小さいが地方都市にしては大きい方だろう。
Clubスノーキャッスルという店の前に立っていた、看板の電気は点いていない。
20時少し前だ、この時間は、まだ準備中であることを俺は知っていた。
緒方は、扉を開け中に入った。
中は明るくミーティングをやっているようだ。
ボーイが一人走ってきた。
「お客さん、まだ準備中です。」
「富田は、いるか」
富田は、ここのオーナである。
ミーティングには出ているはずだった。
「どちら様ですか」
「緒方と言えばわかる」
「お待ちください。」と言って、ボーイは奥に入っていった。
しばらくして、ボーイが帰ってきた。
「すみません、富田は出か・・・」といいかけた。
俺はボーイを無視し中に入っていった。
豪華なつくりの内装をしている。
女性が14人とボーイが2人立っていた。
富田が話をやめ緒方を見る。
「緒方さん、困りますよミーティング中です。」と威圧するような声でいった。
「すまんな、こっちも急ぎの用でね」
「ミーティングが終わるまで、外で待っていて下さいよ」
「入口のボーイは、お前が出かけたと言ってたんでね」
入口のボーイが緒方を追って中に入って来た。
富田は、そのボーイに張り手をみまった。
「すみません、事務所で待って頂だけますか」威圧感のある声は変わらない。
「ああ、そさせて貰うよ」
「案内しろ」といって、張り手を入れたボーイを睨んだ。
ボーイがしょげた様子で俺を入口近くの事務所に案内する。
5分ほど待って富田が入って来た。
無言で富田は俺の前にあるソファーに腰をおろす。
「何の用ですか、忙しいもんで」と突き放すように言った。
「お前のとこ、薬を扱ってるか」
「突然来て、薬扱ってるかってどういうことですか」
「扱ってるか、扱ってないか聞いてんだよ」語調を変えいった。
「薬は組では法度です。やってる訳ないでしょ」
「扱ってる奴は知らないのか」
「知りませんね」
「サザンクロスの北島俊介は知ってるか」質問の方向を変えることにした。
富田の目が泳いだ。
「知りませんね」
「北島俊介は、誰の舎弟だ」
「知らないって言ってるでしょう」
「ゴロマキのゴロッチって言われたお前が、何ビビってんだよ!!
それとも、こんな店任されて頭使うようになったら大人しくなっちまったか」
「あんた、もう刑事(デカ)じゃないんだ口が災いするって事もあるんですぜ」
「やってみな」富田の目を睨んだ。
富田は、席を立ち扉に向かった。
「サザンクロスは何処の組も入ってないよ、オーナは日本人じゃねーって話だ」と言って出て行った。
俺は、スノーキャッスルを出た。
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